2014年6月1日日曜日

2045年問題

技術的特異点(テクノロジカル・シンギュラリティ)という言葉を聞いたことがあるだろうか?

これまで人類が築き上げてきた技術史の延長線上では予測できなくなる未来モデルの限界点のことを指す。米国の科学者、レイ・カーツワイルを始めとする科学者の一部が、「特異点の後では科学技術の進歩を支配するのは人類ではなく人工知能やポスト・ヒューマンであり、これまでの人類の傾向に基づいた未来予測は通用しなくなる」と主張しており、レイ・カーツワイルは「機械の知能が人類の知能を超える日」が到来するタイミングを2045年としている。一部のSFマニアやギーク達が支持するオカルト科学扱いされた主張でもあるが、2012年にグーグルがレイ・カーツワイルを獲得したことから、にわかに真実味を帯びた話題として扱われるようになり始めた。

この予測の詳細は割愛するが、街を歩いても、電車に乗っても、老いも若きもほとんどの人が必死にスマホを操作している光景は見慣れたものとはいえ、一種異様な光景でもある。異様に思うのは、いわばスマホを手放せない人達というのは、手のひらの小さなデバイスに支配されているように感じるからでもあろう。歩きながらも首をうなだれて携帯に見入り、突進してくる人を危うくよけたというような経験は誰にでもあるだろう。

今の段階ではまだ人体とは別体の外部デバイスに過ぎないが、次の段階はこれが身に纏うもの、すなわち、ウェアラブル・デバイスへと置き換わって行く。腕時計タイプのものやグーグル・グラスのようなものだ。ここまではまだ人体の外側だが、さらに次の段階は、いよいよ、チップやセンサーなどが人体の内側に組み込まれる時代が来ると予想される。人間の神経細胞レベルのナノコンピュータデバイスを作って人体に埋め込み、人間の頭脳中枢をコンピュータに直結させて「意識」をコントロールしたり、脳細胞に存在する情報を取り出すようなことも可能になるだろう。

米国のSF映画、「ターミネーター」ではサイバーダイン社が生み出したスカイネットというコンピューターネットワークが人類の殲滅を図ろうとする中での、コンピューターや殺人ロボットと人間の闘いを描いたものであった。また「マトリックス」では、人体にプラグインするシーンが生々しかったが、コンピュータの反乱によって人間社会が崩壊し、人間はコンピュータの動力源として培養されているという設定で、人間の意識と仮想現実が入り乱れた中でのやはりコンピュータと人間の闘いがテーマとなっていた。これらのハリウッド映画は、まさに技術的特異点の先の未来を描こうとしたフィクションである。しかし、AI(人工知能)ベンチャーのDeepMindやロボットベンチャー数社のの買収に励むグーグルの姿は映画の中に登場するハイテク企業とダブらないこともない。

技術的特異点の話については、それを肯定する人もいれば一笑に付す人もいる。また、そのような未来が来ることには肯定的でも、それを積極的に受け入れようとする立場と、人類にとって危険過ぎると否定する立場もあるだろう。

人間の精神や魂が人類の叡智を凌駕した機械にコントロールされるような未来を生み出さない為にも、そして、人類が人類であり続けるためにも、今後は宗教や哲学や芸術などが科学技術の飛躍的な進化とバランスを保つための実学としての役割をもっと積極的に担っていかねばならないように感じている。このテーマについては今後も追い続けて行きたい。

2 件のコメント:

  1. 生命が持つ飽くなき「向上心」、「生き抜く力」「環境に適用してゆく力」。
    今まで不可能だったことが可能になる、これは価値のあることだし、誰も否定はできないでしょう。技術の進歩は生命の生きる術であり「種」、「玉」として大切に醸成させるべきものだと思うのです。
    しかし、単なる好奇心や欲望だけで「技術」を解放すると、他の生命や環境に様々な負荷を掛け、やがては人間自体にその害がふり掛かってくる・・・ 原発事故はその好事例だと思うのです。
    誰もが気付き始めている"好奇心や欲望だけて「技術」を解放すること"の危険性・・・
    その一番の被害者は人間の「健全な心」だと思うのです。失ってしまった健全性をいかに取り戻すのか?そこに重きを置く社会に作り直すことが価値あることだと思います。

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  2. io3mr10様、コメントありがとうございます。反映が遅くなって失礼しました。まったくその通りと共感致します。ここにも書いたように、今後、あらためて本来の宗教、哲学、芸術などの役割や意味、技術の進歩とのバランスが重要になると感じています。

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