2019年4月1日月曜日

桜を愛でる国の文化

春は一年の中でもっとも華やぐ季節です。桜の開花が冬の終わりと春の訪れを告げ、着慣れないスーツを身にまとった新社会人たちが街に溢れ、明るく新鮮なエネルギーが満ち溢れます。

ところで、毎年思うのですが、桜というのは実に不思議な植物です。一年のうちにたった一度だけごく限られた短い時間に限って華やかな花を咲かせ、その後はさっと散ってしまいます。

花を付けている間は、私たちを前向きで元気な気分に高揚させ、生命力を限りなく高めてくれるような気がします。一方で、花が散るときには人生のはかなさとも重ねあわせて、感傷的な気分をたっぷりと味わわせてもくれます。「散る桜 残る桜も 散る桜」という良寛和尚の名句がありますが、「生命の輝き」と「はかなさ」を、この一句の中で三度も「桜」を使うことによって余すところなく表現しているように感じます。

毎年、桜の開花を待ち焦がれ、開花とともにお祭り騒ぎをして、散る桜を見ながら人生のはかなさを思う――こんな植物は桜以外にはなかなか思いつきません。さらに付け加えると、桜は、少なくとも一年で三回、私たちを楽しませてくれます。花が散ったあとの新緑の美しさは格別ですし、秋の紅葉も見事です。

国策に沿った観光庁や旅行会社のプロモーション効果もあり、日本を訪れる外国人が急増していますが、日本の花見は海外でも広く知られるようになりました。花見を目的とした来日客も増えています。日本の文化は桜という植物なしには考えられませんが、海外の人たちにも、日本文化の奥行きを桜の素晴らしさと共に感じ取って欲しいものです。