11日(金)の14:46に地震が起きた時、 私は外での打ち合わせを終えて帰社する途中で、地下鉄千代田線の赤坂駅と乃木坂駅の間にいた。電車が急停車すると同時に大きな揺れが襲ってきた。地下での揺れは恐ろしく大きく感じ、長い揺れが激しさを増してくると、車掌のアナウンスも緊迫してきて、電車が脱線してトンネルが崩れるのではないかと、一瞬覚悟を決めるほどだった。少し以前に、仲間と大江戸線に乗る時に、「地下鉄に乗ってる時には地震にだけは遭いたくないものだな」と冗談で話したのが思い出された。
揺れは続き、地上の家族や仲間のことが心配でたまらなかったが、揺れが収まって地下鉄が駅に向けて再度動き出すまではなすすべもなく地底に閉じ込められて身動きが取れなかった。ようやく地下鉄がそれぞれの最寄り駅までの徐行運転を開始して、乃木坂駅に到着し、携帯の電波のアンテナが立った瞬間に家族や仲間に電話をしたが、既にまったく繋がらなかった。地上ではビル等が倒壊しているのではないかと、はやる気持ちを抑えて地上に出てみると、大勢の人達が外に溢れてはいたものの、見回した範囲では地上の被害は見当たらず、少しホッとした。しかし、その直後、オフィスに戻った後で、東北地方の恐るべき惨状を報道で目の当たりにすることになった(写真は毎日新聞社が配信したもの)。
その後の福島第一原発の損傷による放射能漏れの問題と併せて考えると、今回の未曾有の大災害は今の日本に少なくとも以下のいくつかの問題を一度に突き付けた。
- 地震・津波災害に対する備えの問題(津波被害が想定される地域の土地利用上の法整備や港湾構築の問題)
- 携帯電話などの通信網の緊急時における脆弱性
- 原発への依存度(約30%)を高めてきた国家のエネルギー政策
- 地域を超えた電力供給の融通性の問題
- 原子力災害発生時の指揮命令系統の明確性や情報開示の透明性
- 被災者支援(食糧、医療、エネルギー、避難所、etc.)体制の脆弱性
一つ一つが重たいテーマではあるが、今後、次の災害が起きるまでにこれらのすべてをスピーディーに解決して行かなければならない。
原子力利用に関しては、これから日々議論が深まっていくと思うが、今回の危機によって従来の原発安全神話は完全に崩壊した。もはや、国民は原発の危険性について、完全に目覚めたと言っていいであろう。私見としては、日本のような地震国において原発を乱造することが危険きわまりないことがもはや身に染みた以上、時間は掛かっても電力供給の原発依存率をゼロにしていくことをただちに決意し、代替となるエネルギー政策への方針転換が急務と考える。長期的には、原油依存の体質からも脱却を目指さねばならないことを考えると、やはり水力、風力、太陽光、地熱、マグマ、潮力、波力、振動など、無害で自然のエネルギーを活用したエネルギー政策を打ち立てて、そのための実用化技術の開発に投資して行くしか道はないと思われる。
世界で唯一の被爆国として悲惨な体験をし、核保有に根強く反対してきた国が、一方で原子力に依存したエネルギー政策を進めてきたこと自体が大きな矛盾であったとも言える。そもそも、原子力というのは神様が定めた「パンドラの箱」の一種なのではないかとすら思う。猛毒の放射性物質は人間が下手に手を出すべきものではないのだ。
話は変わるが、シリコンバレーにいる米国の友人がくれたメッセージの中に以下のようなくだりがあった。彼らしい楽観主義にもとづいた意見だが、私もその通りだと思う。これだけの大きな代償を払った以上、この災害で学んだあまたの教訓を確実に生かした新しい国造りがあらゆる面でこれからの我々に求められている。絶対にここから立ち上がって、あらためて強い国を作って行くことに貢献しなければならないと固く決意している。
"In a strange way, and I am a total optimist, this crisis is exactly what Japan needed to wake it up from its sleep. I believe that Japan will be energize by this and will come back infinitely stronger. I think this will stop the long term recession and a lot of young Japanese people will feel their mortality and fight harder."
Fully agreed, Tsujino-san.
返信削除H. Kitano
Thank you! I think we shouldn't just pass over the crisis of the nuclear power plants all over Japan.
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