2019年6月10日月曜日

トゥキディデスの罠

米中貿易戦争が激化しています。これはもちろん単なる貿易収支上の不均衡を問題にしただけの話ではありません。「貿易×技術覇権×安全保障」という形での米中新冷戦の始まりです。従来の覇権国家と新興国家が激しくぶつかり合う現象を「トゥキディデスの罠」というそうですが、急速に台頭してきた中国の脅威に対する米国の焦りや苛立ちは相当なものです。米国では、民主党など反トランプの人たちも、彼の対中国への強硬姿勢にはおおむね同調しています。

これまでのオープンでグローバルな経済秩序は米国にとっては不利に、中国にとっては有利に機能してきたと捉えると、トランプと習近平はそこを共通認識とした上で、トランプは今の戦略的秩序を維持したい、そしてそのために経済秩序を変えたい、習近平は今の戦略的秩序を変えたい、そしてそのために経済秩序は維持したい、という真逆の立場です。

サプライチェーン・リスクは国家の安全保障にも直結するため、グローバル・サプライチェーンの再構築が始まっています。米国や同盟国がファーウェイを締め出す一方で(英国とドイツを除く)、ロシアはファーウェイを使った5Gインフラ構築を積極推進すると発表しており、中露の接近は米国の危機感をさらに高めています。ちなみに、5Gの必須特許はその34%を中国が握っており、ファーウェイはその筆頭企業です。ファーウェイの持つ先進的な5G技術は、長く軍事力や経済力、およびそれらを支える技術力において他国を圧倒して来た米国の地位を揺るがす可能性があるのです。

今月末に大阪で開催されるG20でトランプと習近平が何を話すのかに世界は固唾を飲むことになりそうです。



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