2015年を迎えました。新年おめでとうございます。本年が素晴らしい年となりますことを祈念しております。
お釈迦様の教えに「無財の七施」というものがあるそうです。「お金をかけない」で人に喜んでいただくことが人間関係においてもっとも喜ばれることである、ということで、そういう生き方や態度を奨励するものです。
▼「無財の七施」
1.優しいまなざしで人に接する(眼施・げんせ)
2.温かい笑顔で人に接する(和顏悦色施・わげんえつじきせ)
3.思いやりある言葉をかける(言辞施・ごんじせ)
4.人のために手足を使い汗を流す(身施・しんせ)
5.感謝の心で人に接する(心施・しんせ)
6.自分の席や場所を譲る(牀座施・しょうざせ)
7.一夜の宿を人に提供する(房舎施・ぼうじゃせ)
お金をかけずに態度や体で示す行為がいちばん人に喜ばれ、お金や物を使って喜ばれる行為をするよりも優先度が高いという教えです。こういうことは当たり前の話のようにも聞こえますが、実際に実行するのは簡単ではありません。いろいろと手間がかかったり、努力が必要となります。「笑顔」ひとつとっても、いつでも誰にでも実行できるものではありません。
昨年、YouTubeで見た2014年のTEDxSapporoのスピーチで、植松努さんという方が、「どうせ無理」という言葉をこの世から無くしたい、と熱弁を奮っていました。夢や希望を持って頑張っている人たちに対して、冷たい態度や心無い言葉で接し、そのやる気や自信を奪っていく周囲の人たちの存在が世の中の活力を削いでいる、という主張で共感するものがありました。世の中、実際には「無財の七施」の逆の行動をとる人のほうが多いということだと思います。
日本には「出る杭は打たれる」という言葉があります。こういう言葉が生まれるのは、日本の社会に根強くそのような体質があるからでしょう。最近の言葉ではKYというのもありますが、場の空気を乱し、出しゃばる人はとにかく嫌われます。何事も謙虚に、自分をアピールするよりも周囲に気を遣い、まずは相手を立てる、これは日本が長い歴史のなかで培ってきた美徳のひとつでもありますが、周囲と違うタイプの人を仲間外れにするような風潮は「いじめ」にもつながっており、改めなければならないものです。
昔のソニーでは、求人広告に、「出る杭求む!」や、「英語で啖呵の切れる人求む!」というようなキャッチコピーを使っていました。創業者のひとりである盛田昭夫さんも、「私は生意気な人が欲しい。ソニーというのは生意気な人の個性を殺さない会社です。」と発言しています。また、ソニーと並ぶ戦後企業の代表格であるホンダでは「能ある鷹は爪を出せ!」と言っていたそうです。それはなぜかといえば、世の中のイノベーションというのは大抵そういう人から生まれるということを知っていたからなのでしょう。やはりソニー出身で、ニューズワークステーションやAIBO等のロボット開発を手掛けた天外伺朗氏こと土井利忠氏は、『人材は「不良社員」からさがせ』という本を出しています。
直接お目に掛かったことはありませんが、昨年、青色LEDの実用化でノーベル物理学賞を受賞した中村修二教授などもまさに出る杭の典型だったようです。日亜化学工業時代の中村氏は相当な変わり者で、会社命令を一切無視し、人にも合わず、電話にも出ずに実験装置の製作に没頭していたと言いますし、特許訴訟に至った行動や言論は世間でも大きな話題になりました。
ただ傲慢な人や生意気な人が、必ずしも出る杭というわけではないでしょうし、そういう人をやみくもにちやほやしたところで、イノベーションを生み出すような偉業を達成するとは限らないと思います。しかし、真に出る杭な人たち、すなわち、打たれても打たれてもへこたれず、自分の信じる道を貫いて必ず結果を出すような馬力の持ち主に対しては、まずは世の中の人たちが上記の「無財の七施」を惜しげなく思いっきり施してはいかがでしょうか。夢や信念を持ってチャレンジする人たちにとっては、周囲の応援や激励や手助けが何よりの活力になるでしょう。もちろん、その上で、最後には「お金の支援」もしてあげれば、それだけでさまざまな「夢」が実現する世の中になるのではないでしょうか?
アベノミクスの成長戦略の最も有効な施策は、実は「出る杭たちへの無財の七施」に尽きるのではないかと思います。
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