2013年11月30日土曜日

盗聴問題の波紋とネット社会の現実

米国家安全保障局(NSA)による盗聴問題の波紋が広がっているが、ここまで来ると、今後のインターネット社会の在り方そのものへの問題提起でもあると感じている。

そもそも、歴史的には、国家間での盗聴やスパイ活動などは当たり前の話であって、第二次大戦時にも、その後の冷戦時にも、諜報合戦が国益を大きく左右してきた。しかしながら、今回の米国家機関による盗聴問題は、そのターゲットのすそ野が広く一般庶民にまで及んでいることを明らかにした、ということで重大問題であり、噂されてきたプリズムやエシュロンの実在を裏付ける形にもなった。

最近の米国映画で、個人の行動や履歴がすべて捕捉されて監視されているシーンがよく出てくるが、これは決して映画の中だけの話ではない、ということである。

報道によると、これにはグーグルのシュミット会長も怒りを露わにしており、NSAのほかオバマ大統領、連邦議会の議員に苦情を申し立てたとされている。シュミット会長は、「NSAは危害を加える恐れのある約300人を特定するため、(米国民)3億2000万人すべての通話記録を収集した疑いがある。これは公共政策としてひどいというほかない。(中略)そして恐らく違法だろう」と話している。

また、グーグルのセキュリティシステムに関わるとされる社員も、自身のブログで、「Googleの世界各地のデータセンターをつなぐケーブルから通信を傍受するというNSAのやり方は、法を無視する行為である」と非難している。

このような事態を受けて、米国では早速、「Dark Mail Alliance」なるプロジェクトの発足が発表された。NSAの盗聴や検閲を避ける新たな暗号技術を実現する試みだ。スノーデン氏の事件で炎上したメッセージサービスベンダーのLavabit社の創業者が、当局からの捜査協力要請を拒絶して自身のサービスを閉鎖した上で仕掛けたものだ。当局の不当な介入に対して、グーグルの抗議にとどまらず、このような小さな民間企業も徹底抗戦する姿勢を打ち出しているわけだ。

一方で、長く平和ボケの続くわが国では、セキュリティに関する感度も極端に鈍くなっている。今回も、NSAのターゲットに日本も含まれていた、という報道に対して、防衛大臣が「信じたくない」という発言をし、官房長官も「事柄の性質上、発言は控えたい。日米間ではしかるべく意思疎通を行っている」と述べるにとどまり、米国に厳重抗議する考えがない様子であるのには違和感を覚える。つまりは、日本国政府としては、われわれ日本国民の情報が米国の国家機関に筒抜けになっていても、何のアクションも取らない、ということに等しい。

一般庶民としては、今後、電話やインターネット上での自身のやり取りは、すべてどこかの国家機関あるいは第三者によって捕捉されており、電話やインターネットは決して安全な通信手段ではない、ということを強く自覚した上で、自己防衛の策を講じて行くことを考えていかねばならない。

結局、自分自身の安全や財産を守るのは自分しかいない、という原点に立ち戻ることしか術はない。大変便利な世の中になったが、その代償もまた計り知れないのである。

0 件のコメント:

コメントを投稿