2012年2月2日木曜日

荒天準備

盛田さんが残してくれた言葉の中に、「荒天準備」という言葉がある。世の中が好景気に浮かれているまさにその絶頂の時に、盛田さんは当時のソニー社内へ、「荒天準備」というメッセージを常に逸早く発信されていた。もともと船乗り用語で、「嵐に備えよ」というメッセージである。

ビジネスマンたるもの、順調だな、とか、絶好調だな、とか、幸せだな、とか、向かうところ敵なしだな、とか、一瞬でも思ったとしたら、それは自分自身に対する危険信号だと思わなければならないと思う。 盛田さんには常にそういう緊張感があった。

ビジネスというのは、常に下りのエスカレーターを掛け上がっているようなものだと思う。一瞬でも気を抜いて休んだ途端に真っ逆さまに下り落ちてしまう。現状維持なんてことはありえないのだ。そういう意味では企業経営者の資質としての大事な要素の一つとして「臆病」という要素もあると思う。生き残る為には常に外敵や環境の変化に対して臆病でなければならないのだ。

グーグルだって非常に臆病な会社だ。今の繁栄が明日も続くなんてこれっぽっちも思っていない。だからこそ、屍の山を築きながらも、常に新たな開発投資や企業買収に余念がないのだ。

今日のソニーの会見からはまったく緊張感が伝わってこなかった。プレゼンテーションなんか別に下手くそでも構わないから、本来、聞きたかったのは魂に訴えかけるメッセージだ。医療ビジネスなら医療ビジネスでもいいから、何ゆえソニーがこのタイミングで医療ビジネスに本腰を入れようとするのか、その大義や志を聞きたかった。今の危機的状況を跳ね返すパッションを感じたかった。そういう意味では、何一つ、心に響いてくるものが無かったのは極めて残念であった。

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