2011年4月24日日曜日

大賀さんを偲ぶ

大賀典雄さんが亡くなった。

大賀さんとの初対面は、入社して間もない頃のある週末、北の丸公園の科学技術館で行われていた展示会に行った時に、大賀さんが何人かの取り巻きの人達とその展示会を閲覧しているところに偶然ばったり出くわしたのが最初だった。自分が入社した会社の社長が目の前に居るのに挨拶しない手はないと思い、思い切って、大賀さん達の一団の前に厚かましく進み出て行き、「ソニーの情報処理研究所に勤務している辻野と申します。」と挨拶をして握手を求めた。大賀さんは「あぁ、そう。頑張りなさい」と握手に応じてくれた。

独特の存在感とオーラのある人だった。いつも威風堂々としていて、 「自信満々居士」等と呼ばれることもあったが、ソニーを世界企業にした最大の功労者の一人であったことはまぎれもない。

いろいろなことが思い出される。

ケーブル王やメディア王といわれたTCIのJohn Malone会長が来た時のミーティングは圧巻だった。当時の世界の頂点同士が対座する光景は凄い迫力で、威風堂々とした大賀さんはMaloneと向き合っても一切見劣りすることなく、そのような歴史的瞬間に立ち会っていることに、まだ若かった自分は大いに興奮したものだ。

VODシステムでマイクロソフトと提携しようと奮闘していた時には、尻込みする他の役員連中の反対に困っていた中で、最後は大賀さんがGo signを出してくれた。

VAIOをスタートした頃、もともとPCビジネスに反対していたこともあって、VAIOチームへは風当たりが強かった。今から思えば、水平分業が先々の家電産業の構造を塗り替えることを直感的に察知して危機意識を感じていたのかもしれない。

拙著にも記した、病室でお会いした時のパジャマ姿の光景は今でもありありと思い出す。自分の命よりもソニーのことを心配されていたお姿は心を打った。

その後、回復されてからしばらくして、私が退社を決意し、最後のご挨拶に伺った時には、涙を流して別れを惜しんで下さった。その時に一緒に撮った写真といただいたメッセージは自分の宝物の一つだ。

何度も生命の危機を乗り越えて、まるで不死鳥のようにその都度カムバックされた大賀さんであったが、その「ソニー」を作り上げた最後の大物も、遂に旅立たれた。一つの時代の終わりを惜しむと共に、大賀さんのご冥福を心からお祈り申し上げる。

4 件のコメント:

  1. 大賀さんが、お亡くなりになったとニュースを見て、「辻野さん、大切な師匠を亡くされ寂しい思いをされているだろうな」っと思い日課のブログを見たらやはり・・・
    私にとって、1997年から辻野さんのまっすぐな生き方を手本として、今現在も頑張っています。今回の「グーグルで必要なことはみんなソニーが教えてくれた」を1日で読破して
    迷いが吹っ切れたように今ある職を自分のやり方で突っ走っていこうと思います。辻野さんの口癖でしたが、「またこんな事言ったら、過激だって言われるけど・・・」っと言いながらいっつも「まともな事」言ってらっしゃいましたよね。
    辻野さんにとっての大賀さん・盛田さんは
    私にとっては辻野さんかもしれません。
    水野真紀ではありませんが
    「辻野さん、お仕事頑張ってくださいね」

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  2. どなたなのかわかりませんが、コメントいただきどうもありがとうございます。一緒にお仕事をさせていただいたことがある方のようですね。寂しくなりましたが、新しい時代作りに向けて、我々もますます頑張らねばならないと思います。よろしくお願いします。

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  3. 先日ネットのニュースで大賀さんの訃報を目にしてとても驚きました。
    このことをそろそろ還暦を迎えるSONYファンだった父に話したところ大変悲しんでおりました。
    後で一消費者であった父が見てきたSONYの歴史を教えてもらい、そのモノづくりの企業として常にチャレンジを続け「モルモット」とまで呼ばれるに至ったエピソードにとても笑わせていただきました。こんなに気持ちのいい笑いは久しぶりに味わいました。
    しかし、父の話すSONYと今のSONYはどこか違う・・・抽象的な表現ですが電子書籍にせよテレビにせよMP3プレーヤーにせよ「活力」がないと感じました。

    話は変わりますが私は数ヶ月前に希望していた大学にことごとく落ち、滑り止めの俗にいう「Fラン大学」に近いところへ行くことになりました。
    「このままではダメだ」という思いに駆られ、お世話になった先生の助言もあり色々な本を読むことにしました。著名な作家さんの小説や今流行の本、経済に経営の本。その中の一冊に辻野さんの本がありました。
    あなたの本を読み終えたとき、私はこれからの大学生活で何をしようか?幸い私の行く大学は最底辺という訳ではない。いくらでも努力しだいでなんとかなる。それよりも今は貪欲に学ぼう!そう思えました。
    私はあなたのおかげで一度失いかけた情熱を取り戻すことができました。そんな人間がいるということを、あなたに知っていただきたいのです。
    長文失礼しました。最後に辻野さん、ありがとうございました。

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  4. コメントありがとうございます。思い通りに行かないことがあると、その瞬間にはそれが不幸に思えたり、がっかりしたりするものですが、後から考えるとそれが人生の転機になったりすることがありますから物は考えようだと思います。大学受験が思うように行かなかったことを逆に一つの転機として力強い人生を歩まれるといいと思います。頑張って下さい。

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