心がへこんだ時に取り出して眺める古い本がある。 その書き出しは、「人生とは困難なものである。」という一言だ。 そして、続く。「これは偉大な真実、 最も大きい真実の一つである。 ひとたびこの真実を悟ればそれを超越できるという意味で、 それは偉大な真実なのである。 一旦この真実を理解して本当に受け入れるならば、 人生はもはや困難なものではなくなる。」
Morgan Scott Peckという米国の精神科医が書いた「The Road Less Traveled」(邦訳:愛と心理療法、創元社) という本の出だしだ。この本との出会いは覚えていないが、 この一言にいつも心が救われる。 上記の一節に続くくだりをもう少し紹介する。
「大抵の人たちはこの心理を充分悟ってはいない。むしろ彼らは、 たえず自分の問題、重荷や障害が大きすぎると、 大仰にあるいはひっそりと嘆いている。まるで、 人生は総じて楽なものだ、楽であるべきだというように、である。 自分が直面している困難は、 どこにでもあるような不幸なことではない。どういうわけか、 いわれもなく、よりにもよってこの自分に、あるいは自分の家族、 部族、階級、国、民族、あるいは人類に課せられた不幸なのだ、 と大声で、あるいは小声で言う。 私はこのような嘆きがよくわかる。 私も人並みに同じように嘆いてきたからである。」
彼が言うように、「人生とは楽なものである」、 という前提に立つと、ちょっとしたことでイライラし、 どんどんストレスが溜まっていく。「何故、 よりによって自分ばかりがこうついていないんだ」、 と世を呪うようにすらなる。しかし、「 そもそも人生とは困難なものである」、という前提に立つと、 ほんの小さなこと、ちょっとしたことが、 大きな喜びや深い感謝の気持ちに繋がっていく。 困難を嘆くのではなく、 問題を解決するエネルギーが湧きあがってくる。
所詮、人生とは、 身の回りに抱える課題や次々と起きる問題を解決するための訓練を 積む場なのだと割り切れば、気持ちも少しは楽になるのだ。
アメリカで働く者ですが、この引用は非常に興味をそそられます。現地採用で十数年経ち、アメリカ人のメンタルの弱さを痛感している次第です。根本にあるのが「人生とは楽なものである」というもので、問題が発生する度に「It's unfair」というような嘆きを耳にします。幹部以下の人間が転職する理由の多くはこうした前提で求める職場じゃないから、次に行くと言ったものが多いです。「人生とは困難なものである」という発想を持ち出すと、いかにも日本人の忍耐文化を押し付けているかのようなプッシュバックを受ける事もありますが、中にはそういう考えもあるのか、と目を覚ますかのような返答をする者もいます。アメリカ人をもっとよく分かる為にもこの本を読んでみたいと思います。有難うございます。
返信削除コメントいただきどうもありがとうございます。とてもよくわかります。
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