10月31日の投稿「日本再発見」の補足です。
先日、京都に出掛けた折に、清水三年坂美術館を拝観して来た。こちらは、村田製作所の創業家の村田理如(まさゆき)氏が10年ほど前に創設された美術館で、同氏が集めた幕末から明治初期にかけての日本の美術工芸品が展示してある。ホームページの記述には以下のように書いてある。
「集めるうちに気がついたことは、幕末・明治の美術品の名品はほとんどが海外に流出していて、日本国内には残っていないし、それらを本格的に展示している美術館も国内には存在していないということでした。特に金工(金属工芸)、七宝、印籠、根付等はひどい状態だということが分かってきました。これらの名品が、日本で市場に出れば、海外の業者の手に渡り、たちまち欧米に流出してしまいます。こういう事が、明治以降延々と続いてきた為に日本からほとんど姿を消して しまったのです。だから一般の人が明治の美術品の名品を見る機会はほとんどないといっていいかと思います。
明治以降、日本は急速に欧米の文化を取り入れ、生活スタイルも欧米化しました。学校教育も、美術や音楽は欧米のものが中心でした。日本人の美術に対する関心も、日本の伝統的なものより印象派の絵画や西洋骨董などに集まり、幕末・明治の美術品に関心を持つ人がほとんどいなくなってしまったのです。又、たとえ関心があっても欧米人ほど高く評価しない為、高額な名品は海外に流出していくのです。その結果、日本にはガラクタばかり残り、ますます明治の美術館に対する評価 も下がってしまったのです。
一方、海外で一番人気のある日本美術は何かというと、それは幕末・明治の美術品です。欧米の美術館でも日本美術といえば、幕末・明治の展示が大半ですし、ニューヨークやロンドンの日本美術のオークションでも陶磁器、浮世絵と明治美術が中心で、明治美術の人気が高いのは日本と対照的です。」(以上、同館ホームページからの引用)
この記述を読んで、同種の傾向は何も美術工芸品に留まらず、現代に至るまでさまざまな分野で継続しているのではないかと感じた。たとえば、コンテンツの分野でも、日本原作のホラー映画のリメイクがひと頃ハリウッドで流行っていたが、これなども原作が安値で取引されて、リメイク版が世界的にヒットしても版元には一銭も戻らないような形態の取引がなされていたように聞いている。すなわち、日本人は自分達が生み出したものの凄さを認識できないまま、おいしいところを海外勢に持っていかれてしまう、という傾向があるのではないかと感じる。これが、謙譲の美徳故なのか、お人好しで無欲のせいなのか、あるいは逆に手元の小金に目が眩むせいなのか、真の原因はよくわからないが、いずれにしろ、本来、グローバルにスケールさせて大きなビジネスに出来る素材をたくさん持ち合わせていながら、そのチャンスをみすみす逃してしまうようなことを歴史的に繰り返して来ている点が実際にあるように思う。
これからは、自分達が生み出したのものの価値をグローバルな視野できちんと認識する「目利き」と、それを他人の手ではなく、当人である自分達の手でグローバルマーケットに訴求して外貨を稼ぐ「商魂」が改めて求められているのは間違いない。
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