2012年9月26日水曜日

産業の新陳代謝

仕事柄、長くシリコンバレーの人達と接する機会が多く、また彼の地に通っていたような時期もあった経験から言うと、日本の産業界は圧倒的に新陳代謝のスピードが遅いですね。まず、シリコンバレーにいるようなエンジェルやVCが不在でリスクマネーがまったく回っていません。リスク=オポテュニティに投資するのではなく、リスクがないとわかって初めて投資するような似非投資家が多い印象です。インキュベーションファンドなどといっても、投資額が¥300万とか¥500万とかの小口のものばかりです。リスクがないものに少額投資したところでリターンもたかが知れています。一方で、20世紀の経済発展を牽引してきた大企業の中にはさすがに劣化が目立つところも増えており、21世紀の成長戦略を引き続きそういう企業にばかり託し続けようとするのも無責任で酷な話だと思います。このような我が国のビジネス環境を取り巻く現実については、自ら起業してみることによっても目の当たりにさせられてきました。
 
今の日本に必要な長期改革を2つだけ挙げるとすれば、①産業の新陳代謝を促進するインフラや仕組みの構築と②教育改革であると思っております。世界銀行の調査によると、日本は起業のしやすさという項目で183カ国中107位、課税に関する項目では120位、許認可取得については63位だそうです。起業行為を始め、もっとチャレンジする個や斬新なエネルギーを積極的に応援する環境を整えて行くことはまさに国家の急務と感じております。
 
そのような問題意識から、自分達でできることをまずは始めてみよう、という思いで、このたび、果敢に挑戦する人達を応援するプラットフォームCOUNTDOWNを新たに立ち上げました。これは、所謂クラウドファンディング、ソーシャルファンディングと呼ばれる新たなチャレンジ支援インフラ事業で、弊社の社是である「日本発世界」を基軸に、グローバルな挑戦を志す人達を応援するためのグローバルプラットフォームです。すでに運営を続けている「日本発世界」の越境eコマースALEXCIOUSの事業とも密接な連携を図ることが出来るサービスとして設計しています。
 
このような場が、今後の日本の新陳代謝を促して行く上での一助になれば、という思いで熱い運営をおこなっていきたいと思っています。

2012年9月23日日曜日

ENJOY JAPANESE KOKUSHU

内閣府国家戦略室の「ENJOY JAPANESE KOKUSHU(國酒を楽しもう)」プロジェクトの推進協議会メンバーとして計4回の会合に出席し、先日、古川大臣宛に「國酒等の輸出促進プログラム」を提出して推進協議会としての活動が一旦終了となりました。プロジェクトの名称からはなんだかお気楽な会合のようですが、実際は、国内消費が縮退の傾向にある日本酒や焼酎のグローバルマーケット開拓を推進するための真剣かつ活発な意見交換の場となりました。お酒の専門家でもない私は、越境の電子商取引を推進する立場から参加のお声掛けをいただきましたが、これを機会に日頃感じていることについて忌憚のない意見をいろいろと述べさせていただきました。詳細は、http://www.npu.go.jp/policy/policy04/archive12.html をご参照ください。
 
工業製品で世界の経済大国に上り詰め、made in Japanブランドを確立した我が国ではありますが、それもすっかり昔話となってしまい、国際社会における我が国の存在感はここ最近、急速に薄らいで来ています。特に2011年3月には未曽有の震災にも見舞われ、まさに歴史的な国難ともいえる状況に直面する中で、私が在籍した家電産業を始め、国家の経済発展を牽引してきた主力産業分野においても苦境が目立っています。このテーマについては、このブログでも幾度となく触れてきました。
 
まさに今、これからの新しい産業の機軸を打ち立てねばならない重要な局面にありますが、我が国にとって可能性のある分野は20世紀後半に頑張った工業製品の製造業以外にもエネルギー分野や医療分野など、たくさんあると思います。いわゆる生活文化産業を輸出産業に転換するというテーマもその中の一つですが、残念ながらフランス、イタリアなどに比べると輸出産業としての本格的な展開が遅れていると感じています。今後、酒、食、ファッション、観光、美術、芸術、工芸品などのマーケットを世界を意識して広げていく努力は我が国の国家戦略としても非常に重要なものと感じており、私の現在の活動もこの分野に深く関わっております。

2012年8月24日金曜日

大自然に浸りながら人の縁を思う

今週は遅い夏休みを家族と共にアメリカのニューメキシコ州の山の中で過ごしています。学生時代にイリノイ大学に留学した時に知り合ったこちらの友人が現在ニューメキシコの州都サンタフェに住んでいて、そこから2時間くらい行ったところに広大な土地を確保してプライベートリゾートを営んでおり、そこに招いてくれました。プライベートリゾートと言っても、20棟ほどの古いログキャビンを買い取ってそこを手作りで再開発したような質素なところなのですが、渓谷や森林や野生の動物など、アメリカの大自然を満喫できる素晴らしいところです。

彼と知り合ったのは私が21歳の時でしたが、お互いに結婚した頃から交流が途絶えてしまっていました。しかし、最近になって、facebookやLinkedInによって交流が再開し、昨年、彼が娘を連れて日本に遊びに来た時に25年ぶり位に再会しました。何と、今年17歳になった娘さんがNarutoやOne Pieceなどの日本のコミックやアニメに触発されて大の日本ファンとなり、日本語を勉強するサマースクールに参加するということで、アテンドして来日したのです。

お互いに、順風満帆というよりは紆余曲折、チャレンジ続きの人生なのですが、こうして長い時を経て若い時の友人に再会できたことは、自分自身を再発見したりこれまでの人生をいろいろと振り返ることにもなり、今回もこちらに来て大いに旧交を温めることが出来ました。

人の縁ということや、大自然の恵みの大切さをあらためて深くかみしめる忘れ難い夏休みとなりました。身も心もリフレッシュして来週からはまた仕事に専念したいと思います。

2012年8月11日土曜日

8月に思う

毎年、8月はどうしても歴史に思いを寄せる月となる。6日が広島の原爆記念日。9日は長崎の原爆記念日。そして15日は終戦記念日である。日本には長く平和な時代が続いてきたが、体験しているしていないに関わらず、この国が壮絶な歴史を刻んできたことを忘れるわけにはいかない。そして今は、政治を見ても、経済を見ても、まさに混沌の時代である。太平洋戦争後、日本は直接戦争に巻き込まれることは無くなったが、一方で国防に関してめっきり疎い国となってしまった。防衛大臣が目まぐるしく代わる中、沖縄の米軍基地に関する混乱はオスプレイ導入の是非をめぐる議論に発展し、中国との間では尖閣列島の問題も再燃して予断を許さない。また、昨年3.11の大震災以降、原発災害への対応を巡る大混乱も、この国のリスク管理能力の低さや甘さを白日の下に晒した。そんな中にあって、今年のロンドンでのオリンピックも大詰めを迎えているが、ここにはアスリート達の純粋な力の勝負があり、見る者の胸を打つ。勝つことの難しさ、さらには勝ち続けることの難しさを体を張って教えてくれる選手達の活躍に目が離せない。結局、国の強さは国民一人一人の強さに帰結する。一人一人が目標を持ちそれに向かって全力で取り組む、そしてそういうチャレンジャー達を周囲が支援したり応援する、ということが国の強さや秩序を取り戻していく上での基本であるように思う。オリンピックの勝者へのインタビューを見ていると、勝者たちは例外なく開口一番周囲への感謝の言葉を口にする。チャレンジは一人の努力では成功しない、自分の努力や精進に加えて多くの周囲のサポートが目標達成にとって欠かせないのだいうことを痛感しているからだろう。アスリートだけでなく、我々も今から4年後の自分自身の目標を明確にしてそれを周囲に公言し、多くのサポーターを集めながら目標達成に向けて動き出すことがこの国を良くしていくための第一歩になるような気がする。

2012年7月6日金曜日

加齢は進化

人は皆平等に歳を取る。どんな高齢者にも若い時代はあり、どんな若者もいずれ歳を取っていく。ひとつひとつの年齢は一度しかないかけがいのない年齢なのだからその年齢を楽しんで精一杯生きることが大切だと思う。

よく「自分はまだ若く未熟者だから、、、」とか「いい歳をして、、、」「もう歳だから、、、」などと年齢を言い訳にする人がいるが、 年齢を言い訳にしない生き方がいいと思う。 また、若い人は年配の人達から学べることがたくさんあるし、逆に年配者は若い人達から学べることがたくさんあるので、出来るだけ世代をまたがった交流を心掛けることも大切だと思う。

一般的に、歳を取っていくと肉体的にも精神的にも衰えて行くと言われているが(認めたくない?)、年齢に負けないようにチャレンジするのはとてもいいことだと思う。そういう意味でAnti Agingという言葉もとてもいい言葉だと思う。歳を取ることに対するネガティブな言葉やイメージをポジティブなものに変えるためには、言葉の言い換えをするといいと思う。たとえば、「老化」は「進化」や「成熟」でもある。

昔、クリント・イーストウッドがテレビのインタビュー番組で、「歳を取るということはよりいい人間になるということだ」とさらっと言うのを聞いてなんてかっこいいんだろう、と思った。 Gran Torinoは、若者を更生させる老人の話だったが、いい映画だった。そう、歳とともに老化して衰えて行く人生ではなく、死ぬまで「よりいい人間」を目指して進化し続ける人生を送りたい。

そんなことを思っていたら今月は自分の誕生月であることに気付いた。「進化」を心掛けたいと思う。

2012年7月1日日曜日

シンプル

少し前に、最近出版されたKen Segall著「Think Simple」(NHK出版)を読みました。アップルやスティーブ・ジョブズと長年一緒に仕事をした外部のクリエイティブ・ディレクターがジョブズのスタイルの特徴を10のキーワードでまとめたものですが、これを読んでいると、あまたの日本の大企業が駄目になっていく理由がクリアに説明されているようで非常に面白かったです。日本の大企業だけでなく、マイクロソフト、インテル、デルなどが最近精彩を欠くようになってきている理由も同じです。

その理由を一言で言うと、我々は何事も、物事を複雑にしていく傾向があり、企業も大きくなるにしたがって、シンプルさをどんどん失っていってしまうということです。一方で、ジョブズのスタイルはあくまでもシンプルさを追求することに一切妥協しなかった、ということをさまざまな具体事例を盛り込んで余すことなく説明しています。私もソニー時代、グーグル時代の経験に照らし合わせてまさにその通りと感じました。たとえば、家電量販店に行って、PC売り場にでもTV売り場にでも行くと、各社のあまりにも多くのモデルが並んでいて一体どれを買っていいか迷った経験は誰にでもあるでしょう。オンラインショッピングの場合も同じです。それに対して、アップルのノートPCはMacBook ProとMacBook Airしかなく、それぞれに画面サイズ等のスペックの違うモデルが2モデルずつあるだけという実にシンプルなラインナップを堅持しています。誰もがアップルの成功をうらやみ、このようなモデル数の絞り込みを正しいラインナップ戦略と理解しながらも、どこも決して同じようには出来ないのです。あるいは、大企業の戦略会議などでは、各部署から代表者を出したり、さまざまな人達への配慮から、あっという間に大人数の大会議になってしまいますが、そうなると議論に時間ばかりかかって一向にデシジョンやアクションに繋がらない、といった経験も誰にもあるでしょう。まるで今の民主党のようですが(笑)。。。ジョブズのスタイルは、会議のメンバーはその会議にとって決定的に重要な少人数しか招かない、観客のような人が混ざっていたら退席させる、という点でも徹底していたようですが、これもわかっていても普通の組織ではなかなかできないことだと思います。

勝つためのセオリーなど、本来は実にシンプルなものだと思います。そのシンプルなセオリーを厳格に徹底して実行できるかどうか、ということにすべてがかかっているのです。今決めねばならないことを明日に伸ばす、すぐに返事をしなければならない案件を放置する、会議に余計な人を混ぜる、はっきり言えばいいことを婉曲的に言う、最初から一つだけ作ればいいものをバックアップも含めて複数作る、などなど、こういう行為が物事をどんどん複雑にしていってしまって、気が付いたら時間やお金や大事な経営資源をどんどん無駄にしていってしまうのです。シンプルさの追求とは当たり前のセオリーでありながら決して皆が出来ることではないのです。

2012年6月6日水曜日

音禅法要

昨年、同志社大学経済学部の八木匡教授のご紹介でお目に掛かって以来、懇意にさせていただいている世界的音楽家のツトム・ヤマシタ氏。クラッシック、ジャズ、ロック、フュージョンのそれぞれの世界で頂点を極め、究極の音を求めてたどりついた石の音色で「音禅法要」を生み出されました。 ローリング・ストーンズに誘われた日本人という逸話の持ち主でもあります。京都ご出身のヤマシタ氏が、禅寺の名刹「大徳寺」で毎年開催されているこの「音禅法要」のイベントが、今年は6月2日(土)に執り行われました。私は初めて伺いましたが、コンセプト的には弊社サイトALEXCIOUSでもご紹介している「Walking on Sound」に近いものでした。

今年のテーマは「東日本大震災の復興への祈り」。イタリアとスイスからグレゴリオ聖歌隊の男性歌手二名を招聘し、グレゴリオ聖歌、般若心経をはじめとしたお経の読経、和笛と和太鼓、ヤマシタさんのオリジナル打楽器であるサヌカイトの演奏などが見事に融合した、非常に幻想的かつ感動的なイベントでした。キリスト教と仏教のコラボに少しも違和感を感じることなく、むしろ、共通するものを多く感じました。おそらく、世界的に見ても、このような異教間のコラボや、宗教と芸術と音楽を組み合わせたイベントは稀有だと思います。この見事で類まれなパフォーマンスを構想し具現化されたヤマシタ氏の天才的な才能にあらためて畏敬の念を覚えずにはおれませんでした。

招待制のイベントでしたが、集まった聴衆は300名ほどということで、京都市長の門川大作氏もいらしていました。門川氏とは、グーグル時代にストリートビュー・スペシャルコレクションのイベントを二条城で開催した時にもお目に掛かったのですが、その時のご挨拶のスピーチで、「Google meets Kyoto」というテーマで、「一見ミスマッチに見えるものが実は最適な組み合わせである」、という話をしたことを思い出しました。「人類の知の保全と共有」という観点からは京都の国宝級の神社仏閣をクラウド上に永久保全するというのは極めてGoogleの本質に沿った社会的意義の深い活動だと感じたものです。

今回は「Christianity meets Buddhism」とも「Integration of the life and eternity」とも言える不思議な感覚を味わいながら、東北の大震災で犠牲になられた方々へ思いを巡らせ、復興への祈りを捧げる敬虔なひと時となりました。